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【ビブリオバトル第1位】社会の光と影を描く傑作——貫井徳郎『乱反射』をご紹介!【リカバリーフロア】

4月10日(木)に開催されたビブリオバトル、いよいよ第1位の発表です!

今回、堂々の第1位に輝いたのは、貫井徳郎さんによる小説『乱反射』でした。

『乱反射』は、無関係に思えた小さなできごとたちが複雑に絡み合い、最終的に大きな悲劇へとつながっていくというストーリー。

著者の貫井徳郎さんは、社会派ミステリーを得意とする作家であり、その中でもこの『乱反射』は、「誰もが無自覚のうちに社会の一端を担っている」という重いテーマを見事に描き切った名作です。

作品の概要

物語の舞台は、ある地方都市。

主人公の家族に起こったある痛ましい事故——それは、直接的な悪意によるものではありませんでした。

登場人物たちは、誰もが「自分は悪くない」「少しぐらいなら大丈夫だろう」と思って日々を過ごしていたのです。

しかし、それらの小さな無関心や怠慢が積み重なり、やがて取り返しのつかない悲劇を引き起こします。

本書は、さまざまな視点から語られるオムニバス形式で進行していきます。

警察官、主婦、役所の職員、企業の管理職……。それぞれの日常の中に潜む「責任の所在の曖昧さ」が徐々に浮かび上がってきます。

「自分には関係ない」という意識が、どれほど深刻な結果を招くか——

読んでいるうちに胸が締めつけられるような思いになる作品です。

なぜ精神科デイケアで『乱反射』が選ばれたのか?

今回、この『乱反射』がビブリオバトルで高く評価された理由には、私たちが暮らす社会そのものへの鋭い問題提起があると思います。

依存症、違法薬物、クレプトマニア、ギャンブル依存——私たちが日々向き合っている問題もまた、「一人の問題」ではありません。

社会の中で孤立し、支援が届かず、声を上げられないまま追い詰められていく——

その背景には、周囲の無関心や制度の隙間が影響していることが少なくありません。

『乱反射』が描くのは、誰もが少しずつ社会の「構造的加害者」になりうるという現実です。

そして同時に、それは裏を返せば、「誰かを救える立場にいるかもしれない」ということでもあります。

精神疾患や依存症を抱える方々にとっても、社会の無関心は生きづらさの大きな要因です。

「このくらいならいいだろう」「自分には関係ない」という意識を問い直す意味で、この小説はまさに私たちの治療現場にも深く通じる一冊だといえるでしょう。

今回プレゼンしてくれたメンバーさんの想い

今回『乱反射』を紹介してくれたメンバーさんは、

「自分がこれまで他人事だと思って見過ごしてきたことを反省した」

「自分自身が何か行動を起こす責任を持ちたいと思った」

と感想を話してくれました。

本のプレゼンには熱意があふれており、多くの参加者が心を動かされました。

ビブリオバトルでは、「面白そうな本」を選ぶだけでなく、

「今、ここで読む意味」を伝えられたかどうかも大きなポイントになります。

その点でも今回の『乱反射』は、非常に説得力のあるプレゼンでした。

まとめ

今回のビブリオバトル第1位、貫井徳郎『乱反射』は、

単なる小説を超えて、社会と自分自身を見つめ直すきっかけを与えてくれる一冊でした。

「小さな無関心が、誰かの未来を壊すかもしれない」

そんなことを意識して生きるだけでも、世界は少しずつ変わっていくのかもしれません。

次回のビブリオバトルも、どんな本と出会えるのか楽しみですね!

ブログ担当:スタッフH

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