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スタッフおすすめの本 『依存症と回復、そして資本主義』

『依存症と回復、そして資本主義』は社会学者、中村英代さんが著した深遠な一冊です。本書は依存症を「意志の弱さ」と一刀両断にするのではなく、それを資本主義社会の中で自然に生じる行動パターンとして明らかにします。

中村さんは、「大いなる力」への信頼が中心となる、薬物依存の回復支援施設「ダルク」や世界規模の共同体「十二ステップ・グループ」などの当事者コミュニティを紹介します。この信頼を持つことで、回復者は自身の弱さを認識し、自分自身を変える力を得ると信じられています。

グレゴリー・ベイトソンの考えが本書で特に注目されています。ベイトソンは「ダブルバインド理論」を提唱しました。これは矛盾したメッセージにより混乱する状況が継続すると、精神的な問題が発生するという理論です。また、「分裂生成理論」では、社会的な問題が行動パターンの連鎖から生じると主張しています。

資本主義社会では、経済成長を追求する行動が自然環境や人間関係にダメージを与えるとベイトソンは指摘しています。また、依存症においては、不安を和らげるために薬物を使用する行動が逆に依存を深める可能性があります。

ベイトソンは、「メタレベル」で自分自身と社会を見つめ直すことで、このような問題の連鎖から脱出することが可能だと提唱しました。つまり、自分の状況、感情、行動パターンを客観的に観察し、評価することです。

本書は、ベイトソンの理論を参照し、これらのメタレベルの視点が依存症からの回復にとって重要であることを示しています。依存症の問題を深く掘り下げ、回復者が直面する課題とともに、ベイトソンの思想を通じた理解と対策を提案しています。

依存症という社会問題に新たな視点から迫り、ベイトソンの理論を用いてその解明と対策を試みるこの本は、依存症に直面する人々、支援する側、そして社会全体にとって有益な洞察を提供しています。

ベイトソンの「ダブルバインド理論」を考慮に入れると、依存症は矛盾した環境から生じる混乱の産物とも考えられます。これにより、依存症が個々の意志の問題ではなく、複雑な社会環境の中で生じる問題であることがより明確に理解されます。

また、ベイトソンの「分裂生成理論」を通じて、依存症がどのように発展し維持されるかについての深い洞察を得ることができます。そして、「メタレベル」での視点から自己と社会を見つめ直すことで、依存症からの回復への道筋を示しています。

中村英代さんの『依存症と回復、そして資本主義』は、依存症を抱える人々が自己の問題を理解し、対処するための新たな視点を提供します。同時に、ベイトソンの理論を通じて、依存症が社会全体の問題であることを強調し、個人だけでなく社会全体が解決策に取り組むべきだと提唱しています。

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