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孤立で依存症にはならない?ラットパーク実験追試験
依存症の原因は、依存物質そのものではない。依存の原因は「環境」であり、豊かな環境を提供することが再発防止につながり、孤立は依存を悪化させる。このような結果を示唆した有名な「ラットパーク実験」というものがあります。
実はこのラットパーク実験は追試験が多数されています。今回はラットパーク実験の「その後」をご紹介します。
「ラットパーク実験」とは、1970年代に行われた動物実験で、ラットを孤立した環境と社会的な豊かな環境の2つのグループに分けて、それぞれに麻薬やアルコールを与えたところ、孤立した環境のラットは依存行動を示す傾向が高く、社会的な豊かな環境のラットは依存行動を示す傾向が低かったという結果が報告されました。
しかし、この実験に対しては、多数の追試験が行われており、その結果は複雑であることがわかっています。以下に、いくつかの追試験の結果を簡単にまとめます。
- 1980年代に行われた実験では、ラットを孤立した環境で飼育することは、確かに麻薬依存症を引き起こすことが示されました。しかし、社会的な豊かな環境で飼育されたラットにも、麻薬依存症が発生することが確認されています。
- 2000年代には、ラットパーク実験の結果を再現しようとする実験が数多く行われましたが、その多くは成功しなかったと報告されています。また、社会的な豊かな環境で飼育されたラットでも、麻薬依存症が発生することがあることが示されています。
- さらに、人間に関する研究では、「社会的なつながりの強さ」が麻薬依存症やアルコール依存症に影響を与えることが示されています。つまり、ラットパーク実験の結果は、人間に当てはまらない可能性があることが指摘されています。
- また、最近の研究では、麻薬依存症やアルコール依存症には、遺伝的な要因や神経化学的な要因が関与していることが示唆されています。つまり、単に社会的な環境だけが依存症を引き起こすわけではない可能性があることが指摘されています。
総じて、ラットパーク実験の結果については、社会的な豊かな環境が依存症を防止するという単純な結論を導くことはできないということがわかっています。依存症は、個人の遺伝的な要因、神経化学的な要因、環境的な要因など多くの要素が絡み合って発症する疾患であるため、単一の要因だけで発症するわけではありません。
また、ラットパーク実験の結果が人間にどのように当てはまるかについても、議論が分かれています。人間は、動物と比べて社会的なつながりがより重要であり、また人間には他の動物にはない複雑な社会的・文化的な要素が存在するため、単純にラットパーク実験の結果を人間に当てはめることはできないという指摘もあります。
したがって、ラットパーク実験の結果は、依存症を引き起こす要因の一つとして、孤立した環境が関与する可能性があることを示しています。しかし、その結果を単純化して理解することはできず、依存症の予防や治療には、個人の遺伝的・神経化学的な要因や環境的な要因を総合的に考慮する必要があるとされています。
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