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放火癖(Pyromania)とは

放火癖とは – 第1回

「放火癖(病的放火)」( Pyromania 、パイロマニア)とは、火をつけることへの異常な興味や快感を伴う行動のことを指し、ICD-10やDSM-5といった精神疾患の診断基準において明確に定義されている病的な行動です。この記事では、放火癖の概要や特徴、診断基準について解説していきます。

症例:火を見つめることで安心感を得る少年

14歳の少年Aさんは、幼い頃からキャンプの焚き火や誕生日ケーキのロウソクを見ることが好きでした。成長するにつれて、火を見つめることで日常のストレスが和らぐと感じるようになり、自宅の裏庭でゴミを燃やす行為を頻繁に繰り返すようになりました。

中学生になってからは、小規模な放火を試みるようになり、廃材置き場や空き地で火をつけ、その燃える様子を眺めることに快感を覚えるように。やがてAさんはより刺激的な状況を求め、人通りの少ない商店街のゴミ箱に火をつける行為に及びました。幸いにも大きな被害は出なかったものの、目撃者の通報により補導されました。その後の診察で、彼が「火を見ると嫌なことを忘れられる」と語ったことから、「病的放火」と診断されました。


放火癖の特徴

病的放火は、繰り返し放火を行う障害です。その行動は以下のような特徴を持っています:

  1. 放火行為の動機が曖昧
    金銭的な利益や政治的なメッセージ、犯罪隠蔽など明確な動機がない場合が多いです。代わりに、火を見ることや消火活動への興味や快感が動機となります。
  2. 放火前の緊張感と行為後の快感
    行動を起こす前に緊張感や高揚感を感じ、実際に火をつけた後には強い満足感や解放感を覚えることが特徴です。
  3. 火災に関連した活動への執着
    火を見るだけでなく、火災に関連した活動に興味を持つ場合があります。火事現場に駆けつけたり、消防署の前で時間を過ごしたりなどの行動がみられます。
  4. 他人の生命や財産への無関心
    火災による被害やリスクについて考えることができないか、あるいはそれを気にしないという特性があります。

診断基準:ICD-10とDSM-5

放火癖の診断には、以下のような基準が用いられます。

ICD-10の診断基準:

  • 明確な動機がないにもかかわらず、繰り返し意図的な放火を行う。
  • 火やその関連状況に強い興味を示す。
  • 放火行為の前に緊張感が高まり、行為後には強い満足感や快感を得る。

DSM-5の診断基準:

  • 少なくとも2回以上の意図的な放火行為を行っている。
  • 放火前に強い緊張感や感情的高揚を感じる。
  • 放火や火災関連の状況に興味を示し、魅了される。
  • 金銭的利益や政治的動機、犯罪の隠蔽などの目的ではない。

次回の記事では、放火癖の原因や背景について詳しく解説します。また、特に興味深い心理社会的要因についても触れていきます。

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