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スタッフおすすめの本 『Noise』

『Noise』は、ノーベル経済学賞受賞者であるダニエル・カーネマンの最新作です。本書は人間の判断に影響を与える「ノイズ」と呼ばれる事象について解説しています。

カーネマンは、行動経済学の創始者の1人として有名であり、本書でも行動経済学の観点からノイズについて考察しています。行動経済学とは、人間の行動に影響を与える心理的・社会的要因を研究する学問であり、これまでの経済学の枠組みを変えました。

カーネマンは、ダーツの例を用いて、ノイズとバイアスの違いを説明しています。ダーツを投げるときに、的の中央を同じように狙っても結果はばらつきます。このように、繰り返し行われるタスクにおいて無作為に生じるばらつきのことをノイズと呼びます。一方、バイアスはランダムなばらつきではなく、「常に中央から右にずれる」など一定の偏りを指します。

『Noise』はエビデンスに基づいた著作である点も魅力的です。カーネマンは、多数の研究データや実験結果をもとに、ノイズの実際的な影響や対策について詳細に分析しています。ビジネスや法律、医療分野など、人間の判断が重要な役割を果たす場面でのノイズの影響を具体的に説明し、その対処法についても提案しています。

例えば、裁判所や保険業界では、同じような状況下でも判断にバラつきが生じることがあります。カーネマンは、これらの場面においてノイズを軽減するための方法として、標準化やデータ分析、判断プロセスの見直しなどを提案しています。

また、医療分野においても、診断の正確性や医療の質の向上にノイズが影響していることが分かっています。カーネマンは、医療現場においてもデータの活用やシステムの導入などを通じてノイズを軽減することが重要であると指摘しています。

依存行動においてもノイズを分析することは大切です。例えば、ある状況下でギャンブルを繰り返している依存症者が、全く同じ状況下でギャンブルをしなかった、といった場面を想定してください。ある状況下で依存行動をしない選択は単なるばらつき(=ノイズ)なのか、コーピングが上手くいった結果なのかを見極めるために本書の内容は役立ちます。

『Noise』はダニエル・カーネマンが長年の研究成果を元に書いた良書だと思いました。エビデンスに基づいたアプローチで、ノイズを軽減する具体策が提案されています。皆さんもぜひ読んでみてください。

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