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物語でつながるリワークの時間 ─ 表現プログラム『初夏の夜の夢』(前編)

ことばを紡ぎ、物語を編む時間。今回ご紹介するのは「表現の時間」のなかでも人気のある創作プログラム『 リレー小説』です。「書くことが好き」「物語を考えるのが楽しい」「自分の世界を表現してみたい」─ そんな気持ちを持つ方々が、数名のチームとなり、ひとつの物語をリレー形式で創りあげていきます。

ひとりが書いた文章を次の人が引き継ぎ、さらにその続きを別の人が書く。文章のスタイルや視点の違いが折り重なり、時には思いがけない展開が生まれるのがこのプログラムの醍醐味です。
ルールはシンプルですが、「物語を共有する」楽しさと想像の枠を超えて広がっていく創作の面白さが詰まっています。

今回のテーマは『初夏の夜の夢』。涼やかな風が吹き抜ける夕暮れや、虫の声が響く夜の情景をヒントに、それぞれのチームが自由な発想で物語を編み上げました。今月は2チームが参加し、どちらも個性豊かな物語が完成。本ブログでは前編・後編の2回に分けてその作品をご紹介します。

前編となる今回は、Aチームの物語をご紹介。静けさと幻想が入り混じる初夏の夜を舞台に、心の奥にそっと触れるような作品が生まれました。 ※筆者が交代するたびに✦マークをつけています。それでは、どうぞお楽しみください。

【チームA】
✦ 7月になり、大学生の僕は明日から夏休みだ。夏休みの予定と言えば、所属しているテニスサークル合宿ぐらいで、後はバイトに明け暮れる事になるのだろうかと、ちょっとため息をついていた。
✦ 「のぶひこ!こんなところにいたー。」急に後ろから声を掛けられた。サークル仲間の真子だった。
「テスト終わった?テニスコート行こーぜー。」真子はフランクなやつで、僕のため息をかき消すように、屈託なく笑った。
✦ 真子と出会ったのは三年前。新歓で出会った時から気になる存在だけど…。お互い就活や課題、サークルで忙しく、真子に気持ちは伝えられていない。
✦ テニスの練習の後、中山湖の夕日を眺めながら、三年間思い続けていた真子のことを考えていた。告白するべきか、しないで心にしまっておくべきか…。
✦ と、考えていたら、サークルメンバーの一人が、「どうせ皆、夜、予定無いだろ。皆で花火しようぜ」と声を上げた。真子が「やるやる、皆でやろうよ」と、ノリノリになっていた。僕は返事をする間も無く、参加させられる事になった。
✦ 騒ぐ皆を横目に、僕は線香花火を手に取る。すると、隣に人が来た気配がした。
✦ 真子だった。いつもと雰囲気が違う。なんかこう、ソワソワしていて落ち着きがない。
✦ 真子だ。真子が男と一緒に手をつないで楽しそうに笑っている。僕は心で思った。
♪コートでは 誰でも ひとり ひとりきり 私の愛も 私の苦しみも 誰も分かってくれない♪
そして僕は恋をあきらめ、バイトとエースをねらう事にした。
儚い初夏の夜の夢…

~ライフサポート・クリニックは、うつ・不眠・不安などの治療と共に、復職支援・発達障害・依存症の専門治療に力を入れているメンタルクリニック(心療内科・精神科)です~
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